松本克のブログ

国立高校の甲子園出場に関する記事でこのブログに巡り会ったので、その辺りのことが中心になるかな・・・

人の才能に気付く才能…

 手元にある電子辞書の中に『数え方の辞典』というのが含まれている。
 買った時にザッとは見たはずだが、その後一度も調べたことが無い。
 何の気の迷いか、この間パラッパラッと、――電子辞書を「パラッパラッと」というのも変な感じだが、とにかく、見てみたわけだ:


[A] ものの数え方
[B] 助数詞・単位
[C] コラム


の中から、『コラム』を選んでみると、


1.なぜイカやカニは「1杯(ぱい)」~
2.ウサギは鳥の一種?名前と数~
3.缶ジュースとアスパラガスの~
4.人魚は「1人」?それとも[1匹]?
・・・
と、コラムの題名が続く。


 特別何かを調べようというわけでなかったので、何か一つを選ぶのも面倒だなと思っていると、
25.カンチューハイ「二本」分のド~
という酒に関する題名にちょっと目が留まった:


25.カンチューハイ「二本」分のドラマ
[コラム]
 「嫁さんになれよ」だなんてカンチューハイ二本で言ってしまっていいの
俵さんは、歌人の中でもお酒好きで有名で、『百人一酒(ひゃくにんいっしゅ)』という、数え方の妙を熟知したタイトルのエッセイも書かれています。言うなれば、酒と数え方の最高の味わいを醸造する歌の名杜氏。この作品も、見事に「二本」という数え方で、登場する男女の関係を描き出しています。
想像してみてください。チューハイを缶で飲むという状況は、居酒屋や洒落たバーなどではなく、おそらく彼のアパートといった日常的な場所でしょう。お金はないけど、仲睦まじい男女。彼女は「何か作るね」と言って立ち上がり、彼の冷蔵庫の中に残っている有り合わせの材料で、ささっと気の利いたおつまみなどを作ります。それが、ちょうど彼が缶を2本空ける時間。そして、出されたつまみを口にした彼が、思わず「嫁さんになれよ」と口走ってしまう――そんなほほえましい光景が目に浮かびます。「二本」という数え方の中にこんなドラマを思い描いてしまいますね。
俵さんの“数え方杜氏”としてのセンスがどれくらい素晴らしいのかを説明するために、ちょっと名歌に手を入れてしまいましょう。
 「嫁さんになれよ」だなんてチューハイ『二杯』で言ってしまっていいの
どうですか?これだと、飲み屋でたまたま隣に座った女性を、酒に弱い男性が「誰でもいいから、俺の嫁さんになってくれ!」と、口説いているだけの、何だか安っぽくて酒くさい歌になってしまいませんか?「二本」と「二杯」。数え方をたった1文字変えるだけで、こんなにも歌の雰囲気が変わるのです。


 まず、「俵万智さんが酒好きで有名だ」という重要な初耳情報に接することができたことが最大の収穫である。


次が、今こうやって引用しながら自分で文字を拾ってみて初めて気付いたことである。
コラムニストが比較用に作った作品では「カンチューハイ」の「カン」の2文字が丸々抜けている!
短詩形についての話でありながら、目読時にはまるで気付かなかった2文字もの減!
「コラムニストもなかなかやるじゃないか」というのが新鮮な気付きだ。


そして、最後はやはり、「日頃見過ごしている貴重な情報が、そこら中、有りと有らゆる所に転がっている」という代り映えのしない人生訓である。
この世は宝の山だ…